約束

  • 2016.01.21 Thursday
  • 13:11
久しぶりにこのブログに書き込みをしている。ほんの5年振り位だろうか。アハハ
別に定期的にまた何かを書こうなんて思っている訳でもなく只の気まぐれでしかないのだが・・

年末から正月明けまでの10日間ほどを東京から1時間程の温泉街で過ごした。
これはここ7、8年同じでこの温泉街で何をする訳でもなく、朝から酒を飲み只ぼんやりとした時間を過ごしているだけなのだが。
読みためている本を5,6冊持参した。しかしどうも最近目がかすみ始めて一向に読み進められない。
しょうがないので又酒をのむ。眠くなるからそのまま眠る。
目が覚めると深夜3時くらいだったりするのだが、目が覚めた以上それは私にとっての
朝なのだから又酒を呑む。(殆ど病気だね)
正月の温泉街とは言えど昔ほど人がいる訳でもなく、逆に正月三が日は街が静かだったりする。
私は10年ほど前にある人に、この温泉街に連れて来られた事がきっかけで、1年の何週間かを
この街で過ごすようになった。長い年には3か月近くいた事もあるし、ここになら住んでもいいかしら
なんて本気で思ったこともある。
温泉街から車で10分程の所に気の知れたゴルフ場があり気が向くと散歩がてらに一人コースを廻る。
アップダウンが激しいコースなので18コースを歩くと酒も抜けて丁度良い(笑)
何年も同じ様に通っているうちに支配人やキャディとも顔見知りになっていて
よほど混み合う時期でない限りは予約もせずに行き受付のMちゃんに「あら、ひさしぶりね」
なんて言われながら勝手に一人クラブを担いでスタートして行く。
日本で一番早いと言われているこの街の梅だが、暖冬のせいか殆ど咲き終わりで驚いた。
朝はウグイスなんかが鳴いたりしているんだな・・

始めてその店を訪れたのも確か6、7年前の年末で行きつけのM鮨でしこたま呑んでから女の子のいる店に
オジサン達は飛び込みで入った。客は殆どが浴衣姿で温泉宿の下駄をはいた男たちで賑わっていた。
酔っ払いのオジサンの隣に座った女の子は目の印象が強い20代半ばに見えるN美だった。
N美はあまりしゃべらずニコニコと笑っている。
少し人見知りをするのだろうか・・笑顔なのだがどこか構えているような気がした。
もちろん呂律も廻っていないオジサンの相手なのだから身構えする方が当たり前か。アハハ
少し話していると慣れて来たのか大きな目で最近は不景気だからなんて話をしている。
私は彼女の言葉(イントネーション)が気になった。
「君はこの街の人?」
彼女は20年ほど前にこの街に来たと言った。それまでは母親の実家がある北陸の町で育ったのだと。
よくよく聞けば私の故郷の町でしかも車で5分ほどの場所だと言う。しかも母親と娘3姉妹で身寄りも無いこの
街にやってきたのだと。
私は昔から郷土愛というものが無く時々酒場で遭遇する同郷の人に握手を求められても何故だか違和感を感じてしまう。
もっと言うと愛国精神自体がない人でもあるのだが・・
しかしこの時は身寄りもないこの街に親子4人で来たと云う事の方が私には何故か不思議に思えた。
「それでお母さんは?」
私が問うと近くでスナックをやっているのだと言う。
母親の年齢を聞くと彼女の年より母親の年齢の方が私に近い。店の紙ナプキンに簡単な地図を書いてもらい
私は皆と別れ、一人千鳥足で彼女の母親がやっているという地下にあるGという店に入った。
一見の客はあまり来ないらしく私が店の扉を開けるとカウンターに客が2人。振り向いた男達は一瞬不思議そうな顔をした。
カウンターの中から大きな目をした女性が小さな声で
「いらっしゃいませ」
と問うようにこちらを見ている。
私は先ほど合った女の子と同じ目をしている女性の前に座って焼酎を頼んだ。

それから時々Gに顔を出すうちにママからの心付けが故郷の実家に届くようになり
ママが帰省した際には私の実家の年老いた母親の顔を見にいってくれたりもした。
別に男と女の関係がある訳でもなく只酔っぱらうと居心地の良いGのママの店に行きそのままソファーで眠ったりもした。
タクシーを呼び酔っ払いを肩に抱き地下の階段を女性の力で上るのは楽ではなかったろう。
金も持たずに飲み歩いているのだから飲み代も溜まっているだろうに、お腹が空いているだろうからとママ手作りの料理まで持たせてくれた。
いつしか店に通う内に常連とも少しづつだが話をするようになり、ママのゴルフの腕前が相当だという話を聞いた。
「いつか一緒に行きましょうね」
気まぐれでいつこの街に来るかもしれない私にもママは優しい声でゴルフに誘ってくれた。
一昨年、始めて私は街に行く日程をママに連絡しゴルフの約束をした。
しかし、約束の前々日になってどうしても腰痛がひどいのだとママからの連絡がありそのゴルフは延期になった。

昨年末この街に住むSさんから電話が入っていた。かけ直してみるとGのママの訃報を聞いた。

一昨年がたまたま仕事が重なった事もあってここ数年では珍しくこの温泉街に足が遠のいていた。
私はSさんの声を聴きながらただぼんやりとGのママの優しい目と声を思い出していた。
腰痛だと思っていた原因は膵臓癌だったとの事で病院に行った時には既に末期癌だったとの事。
ママに世話になった御礼と無沙汰、そしてゴルフの約束を守れなかった詫びを悩んだ末、ママの携帯にメールで送るとすぐに娘のN美さんから電話を頂いた。
くだらない酔っ払い客からのメールで娘さんの気持ちを抉ってしまったのではとメールを送った事を後悔したが、
さほど苦しまずに逝った事を聞いて少しだけ救われた気持ちになった。3人の娘が皆お嫁に行った事。
孫が出来て喜んでいた事。そして20周年を前にGを閉めた事を聞いた。
良い人ばかりが先に逝ってしまう。

9番ホールで一人ぼんやりとGのママの顔を思い出しながらゴルフのボールを打った。






 

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