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    三年峠

    • 2018.04.12 Thursday
    • 23:11

    険しい峠の道を通らなければ行商に出かける村人達は町まで下りる事が出来なかった。

    その長い峠道を重い荷物をかかえ1日かけて村人は行商に向かう。その峠道は長く険しいだけでなく昔からの言い伝えがあった。

    峠で1度でも転んでしまうと3年以内に死んでしまうのだと。転んでしまった者達は皆、それが怖くて家からも出れなくなり結局は皆3年以内に亡くなってしまう。だからこの道を通る時には慌てずゆっくりと慎重に登りそして降りたらしい。そしていつからか、この峠道の事を3年峠と呼ぶようになった。これは韓国の昔話で親が子供に読み聞かせる話らしい。

     

    先週末ゴルフ仲間のKから「来週の土曜日一緒にどうですか」とゴルフの誘いを受けた。

    Kとは今所属しているIゴルフ倶楽部で2,3年前に出会い話すようになった。

    Kは私より5つ程若いのだがどこか物怖じしないゴルフをし、ゴルフ場ではいつもカートに乗り競馬新聞を読んでいる姿が可笑しかった。

    短髪で日焼けしている姿は少し場違いな感じさえしたが何故だかKとはすぐに仲良くなる事が出来た。

    Kと始めて話をしたのはゴルフ終わりのサウナの中で、見た目とは違い人懐っこい目をしていると男だと思った。

    少し話すうちに競馬が好きなのかと問うと馬の事は全くわからないのだと言う。

    しかも人気予想の馬ではなく人気の無い馬をあえてそろえて競馬をしているのだと笑っている。

    きっとギャンブルで勝つ喜びよりも、ちゃんとギャンブルを楽しむ事を知っているから出来るのだろう。

    何度か一緒に酒を呑むようになってkの周りにいる人間が何故Kを慕うのかが少し解る気がした。

    Kはいつも遊びに真剣なのだ。

    私は先月もKからの誘いを野暮用で断っていたことが気になっていたから、土曜のゴルフの約束をしてわかれた。

    木曜日になりKから土曜日のスタート時間を知らせるメールが入り私は約束をしていた事を思い出した。

    「しまった」又約束を忘れていた・・

    仕事の約束なら平気でキャンセルするのだが、遊びの約束は破りたくない。

    まだ木曜日だから行けばいいだけなのだが、私は今週スケジュールが空いていた事もあり数日前からここ数年正月時期に滞在する温泉街にふらりと来ていた。

    この温泉街は品川から新幹線ならば小一時間程度の場所なのだが、埼玉にあるIゴルフ場に電車を乗り継ぐとなると、やはり3時間弱はかかるだろう。

    しかも昨夜、温泉街の遊び人Mちゃんと金曜日の夜に1杯やる約束までしてしまっている。

    Kにそれとなく他のメンバーのゴルフの参加具合を問うと、これがまた運悪く誘った者、皆が日曜日に控えている3大競技の1つ。「理事長杯」という倶楽部主催の競技予選に参加するために流石に前日は身体を休めているらしい。

    私もこれを理由にKにメールしようかとも思ったのだが身体を休めているのは殆どが予選を突破し本選に進む実力者達であって冷やかし出場の私がこれを言っても説得力がなさすぎる。

    私は昨年も、一昨年もこの「理事長杯」予選の前日にゴルフをしている。

    何故そんな事を覚えているのかというと、土曜日にゴルフをしていて今日はやけに知った顔の人間に合わないなと思っていたら同行していたキャディさんが「土田さんは明日の予選にはでれないんでしたっけ」と言われ、競技とはそんなものなのかと思ったことを覚えているからだ。

    それでも翌年も同じ事をキャディさんから聞いて「もう1年が経ったのか」と時間の速さに驚いた事も覚えている。

     

    金曜の夜、私は温泉街のスナックでカラオケを唄いながらKから来ていたメールを見直してみる。

    スタートは8時30分か。まだ7時間はあるな・・8時にはゴルフ場に到着していなければならないから出発は5時頃で大丈夫だろう。まだ呑めるな(笑)

    結局私は温泉街の遊び場で夜明け近くを迎えMちゃんに後ろ髪をひかれながら東京方面の電車に乗る事にした。

    駅に向かうタクシーの中で吐き気を模様しトイレに駆け込むが何も出てはこない。

    あの店の酒,なんか悪いものでも入ってたかな・・こんな時は裏技を使うしかない。

    コンビニに入り、缶ビールと焼酎を買った。

    人の少ない電車内のなるべく目立たない席を陣取り缶ビールを2本程呑んだ辺りで体調が戻ってきた。殆どアル中だな(笑)

    都会に近づくにつれ少しづつ人が増え始める。土曜日だというのにサラリーマン風の姿も見える。

    みんな一体何処に行くのだろう・・会社か。

    小田原を過ぎた辺りで女子高生(だと思うだけだが)2人組なんかも乗ってきて何だか楽しくなってきてしまった。

    眩しいほどの若さを持つ女子高生の瞳が美しい。

    車窓から見える風景と女子高生を交互に見ながら焼酎の缶を開けた辺りで美しい瞳だったはずの少女達の視線を感じた。

    先程まであんなに美しかった瞳が鬼のように恐ろしくなった。

    朝から電車で焼酎を呑むオッサンを見るのは始めてなのだろうか?

    聞いてみょうかとも思ったがやめた・・将来こんな人と結婚なんかしちゃ駄目ですよ〜。今の子はみんな賢いからする訳ないか。

     

    ようやくゴルフ場に到着した時にはスタート時間10分前で着替えを済ませカートに向かう。

    素晴らしい。計画通りだ。ちゃんと着いた。

    こういうのを人生設計というのだろうな。

    祝いに、買い余っていた酎ハイでKと乾杯をする。S君も一緒らしい。それではS君とも乾杯をしようかと思ったがやんわりと断られた。真面目なのねアハハ

    よし今日はS君に酔拳の恐ろしさを教えてあげよう・・午前中はKとS君がせる形で私は5打ほど遅れを取る形で終了。

    しょうがないからと食堂でKとビールで乾杯をした。50分ほどのインターバルで午後のスタートホールに向かう。

    午前中はまだ地面が揺れていたから、午後のラウンドでこの2人をやっつける事を誓って、前の組が打ち終わるまで素振りでもしようとドライバーを振った途端に足がもつれてひっくり返った。

    「何やってんすか」Kの声が聞こえたがおじさんは立ち上がれない。

    靴と靴下を脱ぐと左足首がみるみる腫れあがってきている。

    痛みはさほどないが少し足首をくじいたのかもしれない。

    同行してくれていたキャディさんがマーシャルに連絡をしてくれてすぐに迎えがやってきた。

    やった・・これで午後の負けはなくなった

     

    「骨折ですね」よく知る女医の先生が静かに看護師さんに言っている。

    「明日、理事長杯の予選なんですが出れますかね」笑いながら私が問うと先生は私を見ることもせず「何の?」

    「いや、だからゴルフの・・」

    私は松葉杖を渡されタクシーに乗って自宅に戻った。

     

    それから9日間松葉杖を使い家の中をウロウロとし、不自由な生活を送っている。

    確か7,8年前にも六本木っの飲み屋でひっくり返って肘を骨折した。その時はギプスを5日で自分で外し結果完治するのに2年近くもかかてしまった。理事長杯の行われる朝、私はぼんやりと窓から空を眺めながら嵐でも吹けば良いのにと願っていた。アハハ

    少しおとなしくしていろと云うことなのだろうか。

    松葉杖をついた普段はいないオッサンが家にいる事が珍しいのかつい最近9つになったばかりの娘が、一緒にテレビなんか見ていると時々私をじっと見ている視線に気づく。年頃になってきたのかな(早熟すぎるけど)

    最近私の白い髭を剃れと言ったりなんかもする。

    今年の夏に海の家のじいさんが「お嬢ちゃんジイジと一緒でいいね」なんて言われた時に彼女は私とじいさんを交互に睨んでいた。

    きっと彼女の友達の父親たちは皆、爽やかで若さがまだ溢れている働き盛りなのだろう。少なくともおじいちゃんに間違えられる事はないだろう。彼女なりに傷ついたのだろうな・・

    とりあえず海の家のじいさんの首でも絞めてやろうかと思ったが、

    また彼女の前でもめ事を起こすと後で説教されることになるのでやめた。

     

    私は娘がどんな友達と遊んでいるのか、娘のクラスが何組なのか、担任の先生が誰なのかさえも知らない。ダメな父親で申し訳なく思う事がある。

    幼稚園の頃から、朝方帰って来て玄関で倒れている酔っ払いを何も見えていないかのように「行ってきます」と明るくまたいで登園して行った。たくましい。親は無くても子は育っている事を痛感させられる。

     

    「パパ、でも大丈夫よ安心して。3年峠で転んだ人達はみんな1度しか転んでいないから3年しか生きれないの。10回転べば30年は生きれるはずよ」

    先程まで私の耳元で三年峠を読み聞かせてくれていた少女は、もう寝息を立てて私のベッドで眠ってしまっている。

     

     

     

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